家を建てる場合、広さを表す用語として『建坪(建築面積)』・『延べ床面積(延べ坪)』・『施工面積』といった言葉をよく聞きます。
ですが事前に知識として頭に入れておかなければ、突然耳にしてもどの部分の面積の話をしているのか、その違いや意味を理解するのってなかなか難しいですよね。
「建坪○坪の2階建てなら総額○○万円で可能です。」
「延べ床面積は○○㎡を目安にすると、ご家族4人ですと広々とした家が建てることが出来ますよ。」
「この家の事例では施工面積○坪で、当社で多く手がけている規模となります。」
などなど、住宅会社の営業と話していても当たり前のように使ってきますので、マイホーム購入を進める上で誤解のないように正しく理解しておきましょう。
この記事では、多くの人が勘違いしやすい【建坪・延べ床面積・施工面積】の3つがどう違うのか、その用語の意味や用途について詳しく解説していきます。
実は難しくない?建坪(建築面積)・延べ床面積・施工面積のそれぞれの違い
建坪(建築面積)、延べ床面積(延べ坪)、施工面積と聞くと難しく捉えがちですが、それぞれがどの面積のことを指しているのかが分かると、意外と簡単だったと感じるはずです。
今回のテーマと全く同じ質問が、知恵袋に投稿されていました。
Q.【建築面積】 【延床面積】 【施工面積】の違いは何ですか?
A.簡単に言いますね。
建築面積は、建物を真上から見て、外壁の中心線で囲まれた面積です。
延べ床面積は、例えば2階建てなら、バルコニーやポーチなどは除いた1階2階の合計の面積です。
施工面積は、述べ床にバルコニーやポーチなどの面積を加えた全体の面積です。引用元:Yahoo!知恵袋
とても簡潔で分かりやすい回答が寄せられていますが、まとめてみると下記のようになります。
- 建坪(建築面積)…建物の外周を『壁の厚さの中心部分(壁芯)』で囲んだ面積
- 延べ床面積…建物の『壁の厚さの中心部分(壁芯)』で囲まれた各階の床面積を合計した値
- 施工面積(施工床面積)…延べ床面積+他の施工された部分の面積を合計した値
各面積が表している意味について、上記でもある程度分かると思いますが、より理解を深めるためにもそれぞれ図解で見ていきましょう。
建坪(建築面積)とは?
『建坪(たてつぼ)』とは『建築面積』を坪数で表したものになります。
建坪という表現は法律的に明確な定義はされていないものの、住宅業界では『建築基準法で定められている建築面積』と同意義※で多用されることが多いです。
※…ハウスメーカーなどの施工業者によっては『1階床面積』を指すことも
では建坪(建築面積)とは実際にどんなものなのか、下記の図で確認してみましょう。
建坪(建築面積)の計算方法のイメージとしては、建物を空(真上)から見た時に地面が隠れる部分の大きさと思ってください。
上記の図で見てみると、1階の玄関ポーチの部分がくぼんでいますが、その上の2階には子供部屋があるので、そちらの面積で算出されていることが分かりますね。
1階部分よりも2階部分の面積が小さい箇所は1階が、1階部分よりも2階のベランダや玄関ポーチの上など張り出している部分の面積が大きい箇所は2階の大きさで割り出します。
さらに、建築基準法施行令2条では『建物の外壁やそれに代わる柱などの中心線(壁芯)で囲まれた部分の水平投影面積(真上から見たときの面積)』となっています。
例えば外壁の厚さが10cmとした場合であれば、外側から5cm内側に入った部分をぐるりと線で囲んだ面積ということになりますね。
そのため、厳密には先ほどお伝えした『上から見て地面が隠れる面積』よりも小さくなります。
建坪の計算方法
建坪(=建築面積)の意味が分かったところで、建坪の値の計算方法を見てみましょう。
建坪は坪数を指す表現なので、建築面積(㎡)で表記されているものを坪単位になおすことで示すことができます。
1坪=約3.30579㎡で計算できますので、仮に建築面積が115.7㎡だとすると、
115.7㎡÷3.30579㎡(=1坪)=34.999
となり、建坪は約35坪となります。
建坪として含む部分・含まない部分は?
簡単にご説明するために、単純に『建坪=建物を上からみて地面が隠れる面積』とお伝えしましたが、実は建坪には含むべき部分と含まなくても良い部分があります。
建坪として含まれる部分、含まれない部分について、とてもよく表している画像が他サイトで掲載されていましたので、そちらをご紹介します。
出典:株式会社カク企画設計
建坪、正確には建築面積に含む部分・含まれない部分をまとめてみると、
- 建坪(建築面積に含まない部分)
- 外壁の中心線から突出している庇(ひさし)・軒(のき)・バルコニーが1メートル以下の部分
- 土台のない出窓で外壁から50cm以下の部分
- 建坪(建築面積に含まれる部分)
- 外壁の中心線から1メートル以上突出している庇(ひさし)・軒(のき)・バルコニーの1メートルを超える部分
- 土台のある出窓
- 柱付きの屋根を柱芯で囲った部分
細かい部分まで掘り下げると、地下室などの要件もありますので、下記のように簡単に覚えておくだけでOKです。
外壁から突出する部分が1メートル以下なら含まず、1メートルを超える場合は突出している部分の先端から1メートル後退させた部分を含ませる。
延べ床面積(延べ坪)とは
『延べ床面積(のべゆかめんせき)』とは、建物の外壁の中心線(壁芯)で囲まれた『各階の床面積を合計したもの』です。
先ほどの建築面積と同様に建築基準法施行令2条でも規定されているもので、他にも『建築延べ面積』や『延べ坪』とも呼ばれたりしていますね。
分かりやすく言い換えると、住宅の建物内で居住に利用できる床のある部分と言えます。
延べ床面積のイメージとしては、上記の図のように各階の床面積をトータルしたもの。
つまり、平屋であれば1階部分のみ、2階建てであれば1階・2階、3階建てであれば1階・2階・3階、の床面積を合計したものを表します。
例えば、1階の床面積が65㎡、2階の床面積が61㎡の場合、この住宅の延べ床面積は126㎡という計算となります。
延べ床面積(延坪)とした含む部分・含まない部分は?
「すべての階の床面積を合計すればいいだけ」なのでとても分かりやすいのですが、実は延べ床面積に含まれる部分と含まない部分が存在します。
出典:西和ホーム株式会社
この延べ床面積として算定される定義が意外と複雑なので、下記でそれぞれまとめます。
- 延べ床面積に含まない部分
- 建物の外部となる玄関ポーチやテラス、ウッドデッキ
- 吹き抜け空間の2階にあたる部分
- ベランダ・バルコニーの先端から2メートル以下の部分
- 天井高が1.4m以下で階下の床面積の1/2以下の屋根裏収納(ロフト)
- 全床面積の1/3未満の地下室の床面積
- 全床面積の1/5未満の駐車スペース(ビルトインガレージ)
- 延べ床面積に含まれる部分
- 階段がある部分(1階と2階どちらにも含む)
- ベランダ・バルコニーの先端から2メートルを超える部分
- 天井高が1.4mを超える、または階下の床面積の1/2を超える屋根裏収納(ロフト)
- 全床面積の1/3を超えた部分の地下室の床面積
- 全床面積の1/5を超えた部分の駐車スペース(ビルトインガレージ)
注文住宅や建売住宅に限らず、間取りや広さなどで重要視するのは、一般的には『建坪』よりも『延べ床面積』になると思います。
建築費用の予算を立てるための目安や、快適に過ごせる広さなのかを判断する指標ともなるので、延べ床面積については特に覚えておきたい住宅用語の1つです。
施工面積/施工床面積とは
『施工面積(せこうめんせき)/施工床面積(せこうゆかめんせき)』とは、その名前のとおり”実際に施工した部分”を指します。
『延べ床面積』では含めずに除外した部分も合わせた合計面積を表すのが一般的ですが、実は『施工面積』は建築基準法では定義されている法定面積ではありません。
住宅会社によっては『延べ床面積』と同意義としても用いられることもありますが、主に『延べ床面積』に加え、除外されたバルコニーやウッドデッキ、玄関ポーチやロフトなど、”建築時に施工した面積※”として算出されていることが多くなります。
※…ハウスメーカーなどの施工業者によっては『延べ床面積』では含まれなかった部分を1/2を算入させる係数を用いることもあるので、同じ図面でも各社によって差が生じる特徴があります
定義が曖昧ながらも住宅会社が『施工面積』を好んで使う理由には、販促や営業時などで『坪単価』を明示する場合に都合が良いという背景があります。
なぜなら、延べ床面積よりも大きくなる施工面積で建築費用の坪単価を計算することで、見積もり時の坪単価の金額を少しでも安く見せることが出来るから。
建築費用2,000万円 延べ床面積112.3㎡(約34坪)の坪単価
2,000万円÷34坪=58.8万円
建築費用2,000万円 施工面積132.2㎡(約40坪)の坪単価
2,000万円÷40坪=50万円
上記の例のように、延べ床面積よりも施工床面積の方が大きくなることで、坪単価を割り出す分母が大きくなって割安感を演出することが可能になります。
施工面積が含む部分・含まない部分は?
『施工面積』に含まれる部分に関しては、先ほどお伝えした1階・2階など各階の床面積をトータルした『延べ床面積』と合わせて、実際には床の存在しない吹き抜け部分や、屋外となる玄関ポーチやウッドデッキなどの面積を加えます。
出典:西和ホーム株式会社
- 施工面積に含まれる部分
- 玄関ポーチ、テラス、ウッドデッキ
- 吹き抜け空間の2階にあたる部分
- ベランダ・バルコニー
- 屋根裏収納やロフト
- 地下室
- 屋内駐車スペース(ビルトインガレージ)
建築費用の目安となる坪単価は、『施工面積』で算出されるものよりも『延床面積』で算出されたものを比較材料とすると、他社と検討する場合でも同じ条件で比べることが可能になりますので、住宅会社に坪単価を伝えられた場合は、なるべく延べ床面積での坪単価を教えてもらうようにしましょう。
実際に家を建てるための工事を施した面積を表していますが、どこまで施工面積に算入させるかどうかは各ハウスメーカー・工務店によって異なるので注意が必要です。
建坪・延べ床面積・施工面積の違いをまとめると…
ではここで改めて、
- 建坪(建築面積)
- 延べ床面積(延べ坪)
- 施工面積(施工床面積)
の違いについてまとめます。
- 建坪(建築面積)
- 建物を真上から見て地面が隠れる部分(水平投影面積)
- 延べ床面積(延べ坪)
- 各階の床面積の合計した値(除外部分あり)
- 施工面積(施工床面積)
- 施工した面積(延べ床面積+延べ床面積で除外した部分を含める)
上記のように、『○○面積』に対してどのような違いがあるのか軽くでも認識を持っておけば、家づくりで住宅会社とやりとりする場合もスムーズに話を進めることが可能になります。
建ぺい率や容積率を算出する計算で用いられる
『施工面積』は法定面積ではありませんので、ハウスメーカーや工務店が坪単価などの表記に利用する以外には特に活躍の場はありませんが、『建坪(建築面積)』や『延べ床面積(延べ坪)』には他にもしっかりとした役割があります。
- 『建坪(建築面積)』=建蔽率(けんぺいりつ)を求める際に必要
- 『延べ床面積(延べ坪)』=容積率(ようせきりつ)を求める際に必要/li>
上記のように、家を建てる時にとても重要な要素で、建築確認申請を行うためにも必要となります。
実は、建物の大きさは自由に決められるわけではなく、土地の広さに対して建設可能な『面積』や『容積』の制限を受けることになります。
その際に、『建坪』や『延べ床面積』をもとに建蔽率や容積率を計算するので、あなたの思い通りの家を建てるためにも、今回の記事を参考に建築用語を覚えておきましょう。